人工知能(AI)進化の時代、ロボットに仕事が奪われた後に生き残る仕事は“ライフワーク”だった?仕事はつまらないし、会社の上下関係は面倒、いつリストラされるかも分からない…そんな先の見えない時代に生きる私たちに求められている新しい働き方を考えます。
目次
仕事がつまらない…そう思っているうちに人工知能(AI)が僕らの何倍も効率よく仕事をこなしていく
「毎日が同じ作業の繰り返しでつまらない、時間の無駄だ」
「自分が辞めたところで代わりはいくらでもいるだろう」
「自分の時間を犠牲にしてまで会社に貢献する気が無い」
こんなことを口に出したら、「なんて生ぬるいやつだ」「社会人の責任の重さがわかってない」など真面目に仕事に取り組んでいる方から色々と矢が飛んできそうです。
しかし、きっとゆとり世代・さとり世代と言われる私たちの年代の人って、上のようなことを誰でも一度は心に思ったことはあると思います(私は一度と言わずのレベルですけれど笑)
やるべきことはちゃんとやっているのに賃金は上がらない、残業は増えるばかり、仕事も大して楽しいわけではない、…など現代の日本の働き方には疑問が募るばかりです。
それなのに、「大学を出て良い会社に入らないと」とか「定年まではちゃんと働かないと」とか、そういった重圧がのしかかってくるので、働く意味や生きる意味ってなんだろう…ふとそんなことを思ったりもします。
自分を犠牲にしてまで一生懸命働く意味がわからない…僕たち“乾けない世代”の働き方を根本的に見直してみる
今回は、そんな不安定な時代に生きる私たちがこれからどう働いて生きていくべきか。
マッキンゼー、Google、楽天、ドコモ…とこれまで数々の職を経験し、激動のIT時代を生き抜いてきた尾原和啓さんの著書『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)』と共に、人工知能(AI)進化の時代に求められる新しい働き方を考えます。
会社のために自分の時間を犠牲にしたくない…僕たちは“乾けない世代”
本書は、やりたくない仕事にそこまで一生懸命になりたくないなぁ…
なんて思う私たちのことを“乾けない世代”としています。
一昔前の世代の“乾いていた世代”…
というと私たちの親世代くらいのことを指すのだけれど、この時代に生まれた人々は、仕事をこなせばこなすほど、お給料も上がって新しいテレビや車を買えるようになったり、夜はナイトクラブに行って美女に囲まれて美味しいワインが飲めるようになる
…つまり、それまで無かったものを自分の手で得ることができる時代でした。
しかし、今はというと、一家に一台(場合によっては数台)カラーテレビやパソコンが生まれた時から家にある、ファミレスに行けば比較的リーズナブルだけど美味しいご飯が食べられる
…私たちは必要なものが比較的揃っていてモノに不自由しない環境でこれまで育ってきました。
何かをやり遂げるよりも、良好な人間関係の下で意味のある仕事をしたい
アメリカ人心理学者のマーティン・セリグマンによると、人の幸せは
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達成(目標をクリアしたときの喜び)
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快楽(ドーパミンによって脳が感じる幸福感)
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良好な人間関係(好きな人たちと一緒にいたい)
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意味合い(自分が何かに貢献していると実感できる
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没頭(ある作業を極め、その過程で成長し続ける)
の五つに分類できるそう。
仕事をやっただけ会社からも評価されて欲しいものも手に入れることができる、そんな親世代の人々は「達成」と「快楽」を追求する人が多い。
一方で、私たち乾けない世代は、「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」の方に重きを置く人が多いのが特徴です。
仕事よりも、個人や友人との時間が大事。何気ない作業のなかにも“今、自分がこの作業をやっている意味”を見出せないと、とたんにやる気が起きなくなる。「没頭」タイプの人も多く、「いくら稼げるか」よりも「仕事に夢中になって時間を忘れてしまった」ということに喜びを感じます。
お金を稼ぐためだとは分かっていても仕事にやりがいを見いだせなくてコロコロ仕事を変えてしまう、つまらない仕事をさっさと切り上げて家に帰ってゲームをしたい…
…確かに言われてみるとそんな気もしますね。
AIがすべて仕事をこなしてくれる未来で、人間にしかできない仕事ってあるの?
最近驚くべきスピードでAI(人工知能)の開発が進み、新しいシステムやサービスがどんどん展開されています。
AIとは、人間の知的営みをコンピュータに行わせるための技術のこと、または人間の知的営みを行うことができるコンピュータプログラムのことである。一般に「人工知能」と和訳される。
今では様々な商品やサービスに人工知能が用いられてきていますね。
グーグルの検索に基づいてその人の嗜好に合った広告が表示されたり、ロボットのPepperくんや、将棋の人間VSコンピュータの試合、人工知能が導入された会話アプリなど…本当に身近な存在になってきています。
人工知能の発達によって未来の社会はどう変わる?
人工知能は2045年には人類の知能を超えるとも言われています(考えただけで恐ろしい…!)。
技術がそこまで発達していなかった昔は、工場などで人を集めてモノをつくる労働集約型が主流でした。しかし技術の進歩とともに、人の手に変わるロボットやシステムが発明され、人間の労働がなくともモノを生産できるようになりました。
そのため、人の労働力は専門知識やデザイン、研究開発など頭を使う仕事に流れるようになりましたが、その仕事も将来はAIがこなすようになるとされています。
想像もつく通り、今まで人間がやってきたような仕事はAIがすべてこなしてくれる時代がやってくるのもそう遠くはありません。
AIの進化は私たちが思っているよりも先を行っていて、考えようによっては、人間の仕事がロボットに奪われてしまう…という将来も生みかねない!
ロボットが全部やってくれる…そんな時代で人間にしか出来ないことって何だろう?
つまり単純に、AIが進化すればするほど私たち人間の仕事が無くなっていくということです。
自分の代わりに働いてくれるAI搭載のロボットが所有できればロボットが代わりにお金を稼いでくれるのでしょうが、一般市民までそうなるとは言い難い。
となると、きっと多くの人はこのままでは職を失ってしまうでしょう。
そのような未来で、私たち人間に残された仕事はあるのでしょうか?
尾原さんは本の中で、人工知能に代替不可能なものとして「嗜好性」を挙げています。
人が頭で考えて、答えを出せるようなものは、人工知能のほうがより優れた答えを早く出せるようになります。一方で、人の嗜好性は、非常に非効率なものなのです。
なぜ嗜好性が非効率なのか。それは、人の嗜好とは無駄なものによって塗り固められたものだからです。
ファッションは嗜好性の最たる例として挙げられています。
効率だけを求めるなら冬に寒さをしのぐために皆ユニクロのヒートテックやウルトラライトダウンを着るはずなのに、実際はデザインや色、モテそうか、それとも人と被らなそうか
…と各々がこだわりを持ってファッションにお金をつぎ込んでいますよね。
これからは、「他人から見れば非効率かもしれないけれど、私はどうしてもこれをやりたい」という、偏愛とも言える嗜好性を、個人がどれだけ大事に育て、それをビジネスに変えていけるかが資本になっていくのです。
この嗜好性までAIが分析し始めたら…という多少の疑いは持ってしまったのですが、少なくともこれから十年、二十年のうちは、こういった人間の嗜好性に基づいたニッチな新しい商品やサービスが求められてくるのではないかと私も思います。
そういった商品の多くは、自分の“好き”から生まれることが多いですよね。
好きなことならどんなに沢山の時間を費やしても苦にならない、気づいたら周りより詳しくなっていた…というのはよくあるパターン。
だから、自分の嗜好性を理解し、それを他人に負けないくらい追求していくことが大切です。
そして、そういったマニアックな趣味を持った人が「あったらいいな・欲しいな…だけど自分一人では作れないなぁ」というような痒い所に手が届く商品を創りだすために、日頃から人々の潜在的なニーズを見つけ出す洞察力も必要とされているのです。
“好き”をお金に変えるためには○○を見つける
効率性を求める仕事を人工知能がこなすようになる中で、私たち人間にしかできない仕事は、複雑に絡み合った人の嗜好性にフィットする商品を生み出すということでした。
著者はこれからの時代はライフワーク…つまり、自分の“生きがい”を見つけることを提案しています。
自分が好きで仕方ないライフワークなら、放っておいても24時間、1年中考えていられます。つまり、ワークのなかのライフワークにおける部分をいかに広げていくかが大事、ということです。これは、ライフとワークが別々に独立していた時代が終わりつつあるということを表した言葉であると言えるでしょう。
そして、先ほど乾けない世代の項で、5つある幸せのうち乾けない世代は、「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」の方に重きを置く人が多いと述べました。
そんな乾けない世代の多くの人が仕事がつまらなく感じてしまったり、仕事に対してやる気がなかったりする原因は、仕事にそういった意味合いや没頭を見いだせないところにあるのかもしれませんね。
人工知能の進化により、正社員=安定という方程式も怪しくなってきました。
昨今では、企業が副業を推奨し始めましたが、それは「いつ減給・失職してもいいように備えておいてね」というメッセージにも見えます。
今の仕事がつまらないと感じてしまったり、更なる成長が見込めなさそうなら、思い切ってもっと好きになれそうな仕事を見つけるのも手でしょう。
人工知能の一歩先を行くためには“違い”を持った人を集める
そして、革新的なアイディアを確実に早く形にしていくために、仕事を行う上で、他人との違いをお互い理解し信頼し合い、得意不得意を補っていく関係性を築くことの重要性も述べています。
組織にはメンバー全員がフラットにつながって、変化に気づいた人が「こういう新しいことをやったほうがいいと思う」とさっと手を挙げて、サクッとプロジェクトチームを作れるような風通しのよさが必要です。
そしてチームを編成するときには、プロジェクトに必要な強みを持ったメンバーや、自分にない強みを持つメンバーを補完して、コラボレーションしていくのです。
会社の中でも下の層になればなるほどお客さんと直接関わることが多いため、そういったお客さんの細かいニーズを把握しやすくなります。
いわゆる“現場”で働く社員がせっかくの良いアイディアを思いついても、それを実現するために上司への報告(その上司はさらに上へと報告…)していたのでは、時間が勿体ないし、その間にどんどん他で商品が出来上がってしまいます。
人工知能の進化がみるみるうちに進んでいく中で、アイディアを瞬時に形にするには、社員同士が平等で、お互いの長所・短所を生かし補い合える関係を作り上げることが必要なのです。
まとめ
以上、まとめると次のようになります。
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乾けない世代は仕事をする上で「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」を重視する
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AIが進化する中で、これからは人の嗜好性に基づいた商品が求められてくる
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自分の嗜好性を理解し追求していくことが大切
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また、そういった嗜好性に基づく潜在的なニーズに気づく洞察力も必要
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著者は新しい働き方として、ライフワークを見つけることを提案
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アイディアをすぐに形にするためには、異なる嗜好性/特技/経験etcを持った人が集まり、平等で、長所・短所を生かし補い合える関係を築くことが必要
本書によって「基本的に働きたくない、でも生活するためのお金は稼がなきゃ」と考えていた仕事観が大きく覆されました。というのは、今まで「好きを仕事にする」というのはどこか現実的ではないと思っていたからです。
しかし、AIが社会に及ぼす影響や、乾けない世代のモチベーションなど、様々な視点からこれからの働き方を考えると、ライフワークを通して働き・食べて・遊んで・生きていくというのは決して夢物語ではなく、むしろ一番人間らしい働き方とも思えます。
本書では、
生きがいはどうやって見つけていけばいいか?
どうやったら円滑なコミュニケーションを行うことができるのか?
また、著者である尾原さんが彼自身ライフワークをどう築いてきたか…
など具体的な体験談や例を用いて説明されてあるので、是非興味を持った人はお手に取ってみてください。