大学生活最後の最後に待ち受けるのが卒業論文。経済学部だけど今の今まで数学を使わずに何とか生き延びてきた、でも卒論はどうしよう…そんな経済学部生のために、数学を使わない卒論テーマの決め方をお教えします。卒論のテーマに悩んだら、是非参考にしてみてください。
さて、そろそろ就職活動も落ち着き、卒論に取り掛かろうかな?そう思っている方も多いかと思います。卒論は、早く取り掛かるに越したことはありませんが、実際テーマを考えてみると「何を研究したらいいかサッパリ…」なんて人も多いと思います。私もそうでした。
今回は、経済学部出身の筆者が卒論テーマを設定した際に参考にしたポイントを交えながら、数学を使わなくていい経済学部の卒論のテーマの決め方をまとめてみました。
目次
テーマを決める前にこれだけは知っておこう…論文とレポートは全くの別物!
まず、研究を進める上で最初に知っておきたいことは、みなさんがこれまで授業で提出してきたレポートと、研究論文は全くの別物だと言うことです。ここをちゃんと分かっていないと、研究にいざ取り掛かった後に苦労するので、ちゃんとその違いを理解しておきましょう。
レポートとは?
…既存研究などで既に言われているものをまとめたもの。新しい発見はない。
論文とは?
…既存研究などで解明できなかった課題を見出し、自分なりに仮説を立て実証する。程度の差はあれ、新しい発見がある。
ものすごい簡潔にですが、レポートと論文がどんなものなのかというのを上にまとめました。大まかにその違いを述べると、研究論文にはこれまでの研究で見出せなかった新しい付加価値があるということです。
それに対して、レポートは過去の研究の結果をまとめた(それに対して自分の感想を述べただけ)に過ぎないのですね。
(厳密に言うとレビュー論文という、多くの既存研究をまとめた研究もあるので、その線引きはすごく曖昧なのですが…)
他大学の卒論がたまに検索にひっかかって見ていると、新しい事実の発見が無いほぼレポートのような卒論もよく見かけるので、この区別がついていない学生さんも意外と多いなぁという印象を受けます。
レポートのような論文にならないために確認すべき三つのポイント「IIR」
自分の卒論のテーマがレポート止まりにならないために、研究したいテーマ(リサーチクエスチョン)が見つかったら、その研究が次の三つのポイント「IIR」を満たしているか考えてみましょう。
Interesting(その研究テーマは意外性や面白みがあるか?)
明らかに分かり切っていることを研究してもあまり意味がありませんし、研究をする身としてもつまらないです。論文の題名を見た人が「おっ、これは面白そう、読んでみたい」「なんでそうなるの?」と興味を持ってくれるようなテーマを探しましょう。
Important(その研究テーマには社会的意義があるか?)
自分が好きなものを研究テーマにするのは構いませんが、それが自分以外の誰にとっても得にならないものであると、勝手に趣味で調べてろよ、と教授たちに思われます。(まぁそういう役に立たない研究ばかりしている教授もたまにいるのですがw)
社会が抱えている課題を解決に導く手立てとなるような、今後の社会にためになるテーマを選定しましょう。
Researchable(その研究テーマが、研究可能か?)
せっかく面白そうなテーマを見つけても、参考に出来る先行研究が全く無かったり、企業内部の人しか知りえない(資料が手に入らない)、とても数ヶ月で終わるような研究内容ではない…などといった問題を抱えていると、研究そのものが実施できません。具体的にどういう方法を使って研究すれば良さそうか、という点まで検討する必要があります。
研究はあくまで「過去」を対象にする!
上のResearchableに関連してですが、研究は基本的に過去の既に起きたことを対象に行います。何故なら、未来のことは当然まだ起こっていないので調べようがないのです。(推測や予測は研究ではありません!)
ですので、リサーチクエスチョンが「~するにはどうしたらいいか?」といった類のものは、ベクトルが未来に向いており研究テーマとしては不適切です。
こういった場合、「~するにはどうしたらいいか?」といった解決策を探るのではなく、その問題となっている現状を引き起こしている要因を明らかにすることを研究の目的にします。
数学を使わない経済学部生の卒論に適するテーマとは?
数学が出来る方なら、色んな統計データを集めて分析したりモデルにしたり…ということが出来たらめちゃくちゃかっこいいと思うのですが、私は大学に入ってから数学につまづき、それ以来経済学部生(厳密にはその中の経営学科)なのに数学から避け続けて、とうとうここまで来てしまいました。
しかし、安心してください。数学が使えなくても卒論を切り抜ける方法はありました。
数学の知識不要!筆者がオススメする2つの研究パターン
私がオススメする数学を必要としない経済学・経営学系の研究パターンは、
・事例分析(比較研究)
・消費者行動分析
の二つです。
事例分析(比較研究)
前者の事例分析は、同一企業内もしくは同業界内等で、成功している製品・失敗している製品をリストアップし、その成功・失敗を分けている要因は一体何なのか?というものを探る研究のスタイルです。
例えば、同一企業内から販売された2種類の商品のうち、片方はブームとなって今も売られているのに、もう片方は売れ行きが伸びずにその市場から撤退してしまった…それはどうしてか?
といったものですかね。
大企業すぎると(AmazonやGoogleなど)既に研究しつくされているので、新しい事実を発見するのは難しいですが、誰もまだ比較していない事例などが見つかれば十分研究可能です。
既存研究や文献調査をもとに分かったことを、大学の講義で習った経済・経営学の理論に当てはめてみると良いでしょう。
また、内定先の企業から情報を得られるのであれば、今まで開発してきた商品や個々のプロジェクトについて吟味してみるのも、自分が働く企業のことを知るきっかけとして良いかもしれません。
消費者行動分析
先ほどの事例分析は企業に重きを置いたのに対し、後者の消費者行動分析は消費者の方にフォーカスした研究です。商品の購買意思決定に影響を及ぼす要因などを探ったりします。行動経済学や心理学の側面も伴ってくる場合が多いです。
消費者行動分析の良い点は、仮説の検証にアンケート調査を行えることです。
キャンパス内で調査を呼びかければ200~300という十分なサンプルがすぐ集まりやすいですし、そういったデータがあるとなんとなく論文の説得力が増します。
何を研究するかですが、「こういうときに消費者はどっちを選ぶのだろう?」「~した後としない時では、消費者のその後の行動にどういった変化が起きるのだろう?」などなど、仮説の立て方によって色々検証できるものがあるかと思います。
企業がつくる商品の先には必ず消費者の存在がありますからね。
また、先の企業の事例研究の最終段階で、では消費者は実際にどう思っているのか?を確かめるために消費者の意識調査を行うなど、上二つをうまく組み合わせる方法も可能でしょう。
具体的なテーマを決めるために大切なポイント3つ
大体ここまで読んでくると、卒論研究の大まかな姿が見えてきたかと思います。後は、読者の皆さんが自分が研究したい!と思えるような具体的なテーマを設定するのみです。具体的なテーマを決めるために、まずはたくさんアイディアを出しましょう!
魅力的なリサーチクエスチョンに出逢うために…
①自分が関心のあることや好きなことに目を向ける
どうせやるのなら自分の身になる研究をした方がずっとやる気が出ますし、楽しいです。
音楽や漫画、アニメ、ゲーム、化粧品、コンビニスイーツ、デザイン…など、自分の身近にあるもの、自分が好きなものに目を向けて、そこでふと浮かんできた疑問から研究が可能ではないか、その話題を掘り下げてみましょう。
②最初のうちはむやみに文献や論文を読み漁らない
リサーチクエスチョンを決める際に陥りがちなのは、疑問点がぼんやりしている段階からむやみに先行研究を読んでしまうこと。そのテーマについて色んな視点を持つことは必要ですが、だらだらと呼んでいるうちに自分がどこに向かっているのか分からなくなってしまいます。
ある程度キーワードが見えてきたら、まず「自分が今知りたいこと」を明確にしてから、次の情報に目を通すようにしましょう。
③すごいことをしようと思わない
筆者はこんなペラペラ喋っているわりにそんなに頭が良くないので、専門用語バリバリの論文やめっちゃ難しいテーマの論文を見ると「ほぉ…」と感心すると同時に自分の脳みそのスポンジ加減に嫌気がさしてくるのですが(笑)、正直学部の卒業論文でそんなに凄いことをしようと思わなくても良いと思います、個人的に。
学部の卒業論文って、「ちゃんと大学で四年勉強して、研究の方法は分かったからね~」と大学側に証明するための意味合いの方が強いと思います。
テーマが凄いかよりも、その論文の著者が、ちゃんと順序だてて研究できているか(先行研究に目を通してる?仮説の根拠は大丈夫?検証方法は理に適っている?独りよがりの意見ではない?など)を教授は見ているものです。
だから、論文といっても、そんなに意気込まなくても大丈夫です。焦らず、自分ができることを着実にこなしていきましょう。
以上、私自身の卒論を書いた経験を踏まえながら、卒業論文のテーマを決める際に参考になりそうなポイントをまとめてみました。数学嫌いの経済学部生をはじめ、多くの学生さんが、この記事を読んで、卒論のイメージをつかんでくれたら嬉しいです。