宮城県の塩釜市にある塩竈市杉村惇美術館では洋画家杉村惇の作品の常設展示を行う他、公民館と美術館が併設する特徴を持ち、古くから市民をはじめ多くの人々の文化活動の場としても機能してきました。また、昭和からの長い歴史を思わせる、大講堂や談話室といった建築も必見です。
歴史ある建築を生かし文化活動を通じて人々の記憶を新たに刻み込む – 塩竈市杉村惇美術館 –
昭和レトロ建築巡りと題して、今回訪れたのは宮城県塩釜市にある塩釜市杉村惇美術館。
こちらの美術館は、昭和25年に建てられた塩竈市公民館本町分室を改装し、平成26年に新たにオープンしました。といっても、いまだに公民館としても使われていて、美術館に公民館が併設しているというちょっぴり珍しい特徴を持った美術館。
仙石線本塩釜駅から徒歩10分程度とアクセスも良い場所にあります。
早速館内へ。
幼少期を思い出すような、古い公民館のあの懐かしい感じ
さっそく建物の中に入ってみます。幼少期に来ていた古い公民館に久しぶりに入ったときのような、あの懐かしい感じ。木の床や階段には、古さの中にどこか温かみが感じられます。
館内は2階建てで、1階には公民館の事務室、行事や講習会などで使われる講習室、カフェとして誰でも利用できる談話室、そして奥に大講堂があります。
2階が美術館になっていて、画家杉村惇の常設展の他、市民ギャラリーにて個展やグループ展などの企画展が定期的に開催されています。
廊下を歩き大講堂へ向かう最中に、講習室がいくつか並んでいます。残念ながら講習室の鍵は閉まっていて中は見れなかったけれど、なんとなく学校の教室のような雰囲気。
この廊下も含めて、内装が学校の校舎のような造りを思わせますね。
大講堂へ…
この日は大講堂が開放されており、自由に出入りすることができました。全体の写真がうまく撮れなかったので、一部分を写した写真だけですが…
滑らかな曲線を描く柱が、高さが10m近くある高い天井に向かってのびています。逆さ懸垂曲線で構成された大空間が、窓から差しむ自然光のぼんやりと柔らかな光に包まれ、とても美しい空間。
反対側にはステージもあって、定期的に音楽のイベントなども行われているようです。
階段を上がり、二階の展示スペースへ
二階へあがり杉村惇の常設展へ。
杉村惇は、明治40年に今の新宿区で生まれましたが、戦後の昭和20年からは、ここ塩釜を拠点に画家の活動を行っていました。彼はその中でも静物画を得意としていて、「静物学者」の名で多くの人に親しまれていました。
常設展は撮影NGでしたが、彼特有のもったりと絵具を重ねていって生まれる重厚感のある作品の数々ーそれは魚や錆びれた空き瓶などモチーフにした静物画だったり、塩釜の美しい港の景色だったりーが展示してありました。
階段を上がってすぐの場所にサロンと呼ばれる小さな部屋があり、こちらも自由に見学ができます。
杉村惇は画家活動以外にも、東北大学や宮城教育大学で教鞭をとり、数々の美術団体の運営にも携わりました。
こちらの部屋では、使いこまれた味のある椅子に腰を掛け、彼が関わってきた活動の資料や塩釜市の歴史的な資料などを自由に閲覧することができます。
部屋の角にある小窓からは、常設展内でも展示されてある杉村惇のアトリエの再現部屋が除けるような仕組みになっています。
また、2階は常設展の他、市民ギャラリーが併設されており、個展やグループ展などの企画展が随時開催されています。大講堂やギャラリーは一般市民への貸し出しも行っているようなので、企画展やイベントの開催としても利用できそうです。
談話室で温かい珈琲と焼き菓子を
展示を見終わったら、一階の入り口近くの談話室で休憩を。
こちらの談話室はカフェになっていて、温かい珈琲や紅茶と共に焼き菓子を楽しむことができます。談話室のレトロ内装とドライフラワーの相性がばっちり。
カフェ内の片隅ではCDやレコードの販売もされており、もしかしたら掘り出し物が見つかるかも?
木のぬくもりに包まれて、すごくほっこりできる空間でした。
まとめ
杉村惇の常設展もさることながら、古い公民館の建築を生かした建物全体の雰囲気がとても素敵でした。
そして、こちらの美術館では市民との交流を目的としたアート系のイベントが定期的に開催されていて、市民ギャラリーには老若男女様々な人の作品が展示されています。
良い意味で敷居の低い美術館、芸術ってこういう風にもっと自由でいいんじゃないかな?
塩釜にいらした際は是非こちらの美術館に立ち寄ってみてくださいね。
塩竈市杉村惇美術館
022-362-2555
宮城県塩竈市本町8番1号
午前10時~午後5時(月曜休館日)